蛋白漏出性腎症(PLN)
こんにちは、ジンベイ動物病院です。
今年もフィラリア予防のシーズンでは沢山の方に健康診断をうけていただきました。近年、健康診断も一緒に受診していただけるワンちゃんがとても増えていて、病気の早期発見への関心の高まりを実感しています。愛犬の1年は人間の4年に相当するというのは有名な話ですね。わんちゃんの時計は私たちよりはだいぶ早く回っています。若い頃は1年に1度、中高齢になってきたら半年ごとに健康診断を受けていただくと病気の早期発見につながりやすいと考えています。
健康診断をしていると思わぬ異常に遭遇することがあります。今日お話しするのもそんな1例になります。
この子はとても元気で症状はありませんでしたが、血液検査でタンパクの数値、アルブミンというものが低下していました。
アルブミンは重度な低下では腹水などが溜まり気付かれることがありますが、中等度では無症状なことも多いです(原因によっては下痢や嘔吐が目立つタイプもあります)。症状はなくても、低アルブミン血症では血栓など飛びやすい状況になりうるので、突然死のリスクなどがあります。
今回の子も低アルブミン血症を呈していて、原因追及のなかで、尿検査をすると尿の中に沢山蛋白が漏れ出ていることがわかりました。これは蛋白漏出性腎症と呼ばれる病態です。
数か月間、血液検査をしつつ経過観察していましたが、やはり徐々にアルブミンが低下、さらに尿蛋白も徐々に増加していることもあり、まずは内服薬による治療を開始しました。治療反応性は悪くなく、尿蛋白も減り、アルブミンも落ち着いてくれたのですが、内服の副作用と思われる腎数値の悪化が認められ、お薬を減量する必要が出てしまいました。減量すると、治療反応は不十分でしたので、別のお薬である免疫抑制剤の使用を検討する流れとなりました。
しかし蛋白漏出性腎症の中にもこの免疫抑制剤による治療が有効なものとそうでないものがあります。また、免疫抑制剤も副作用などのリスクのあるお薬です。そこで適切なお薬の選択には腎生検によるしっかりとした診断があった方がよい為、飼い主様とご相談の上、二次病院にて腎生検の実施をすることになりました。腎生検は無事に完了し、診断結果の元、免疫抑制剤による治療を開始することができました。腎生検後、特殊な病理検査が必要なこともあり、検査後、診断が出て治療を開始するまで2か月近くかかりました。
このように適切な検査を受けても治療を開始するまでも非常に長くかかるケースもありますので、日頃より健康診断などで病気の早期発見に努めることがとても大切であると改めて実感した1例でした。
健康診断は随時受け入れ可能ですので、ご興味のある方はぜひご受診を検討していただけると幸いです。